たまゆらの秘密 ①天下一家は縁の花

1992年6月17日、MLM団体「高度情報科学セミナー」と同団体を主宰する森宮庸介に対して、詐欺の疑いで大阪府警強制捜査が実施された。
その後まもなく同団体は消滅したが、所属メンバーの一部は森宮の説いていた啓発思想「円熟理想社会」を標榜して「日本情報科学」「縁の花」「智閥」などの名義で新規活動体を立ち上げ、情報商材の販売、イベント協賛などを行っていった。
元メンバーらの関与する形で、自己啓発セミナー「笑顔共和国」(主宰者・福田知子)「歓信寺」(河内晢)「にんげんクラブ」(船井幸雄)「なんでんかんでん村」(原裕一郎)、コミューン「ありがとう村」(松下清則)などの団体が2000年代にかけてイベントを実施するほか、各団体や主宰者の人格の素晴らしさを相互に称えあう文書をインターネット上で発信していた。
玉響(オーブ)現象に関する古い言及をネット検索で遡ると、オカルト情報サイトや匿名掲示板への書き込みの他にこれらのイベント参加者のページが多数見つかり「会場で撮影された写真にはたまゆらが良く写っていた」等の賛辞を目にするだろう。

 

時を遡り、経済団体「天下一家の会」「花の輪」「洗心協力会」等を主宰していた内村健一が、宗教法人「大観宮」を熊本県阿蘇町に設立したのは1973年11月のことであった。
内村は、個人資金を投入して同町内にピラミッド型の巨大施設「大観宮会館」を建設し、課税回避が疑われたことで注目を集める。
上記団体の活動は76年ごろピークを迎えるが、79年に「無限連鎖講の防止に関する法律」が制定され、収益の途を断たれる。内村自身も83年に脱税の有罪判決が確定し、収監された。出所後の内村は糖尿病の入院治療を続け、95年に死去した。

熊本県甲佐町に生まれた内村は、蘇陽町(現・山都町)の「日の宮」幣立神社の熱心な信徒であった。内村は、大観宮会館こそは同社の外宮「水の宮」を担うものとすると自負していたのだが、これらの宗教施設も79年には閉鎖。オウム真理教事件後の97年には町役場によって解体された。