死の病跡学 ②無くなるもの

 (1) 全ては禁止されない
 (2) 全ての人間の行為はそれぞれの仕方による(1)への端的な支持にほかならない
というものなので、(2)の普遍性条項がバクーニンのいう不可視独裁の理論的根拠ですね」

「では(2)を改変して

 (2')(なし)

 (2'') 全ての想念はそれぞれの仕方による(1)の端的な実現にほかならない

などとしたらどうでしょうか。普遍性がより強力で、担っている世界の数がより増えてるのではありませんか」

「禁止されないのは『全て』です。担っているのもたった1つの『全て』です。

それ以外は制約されていて、解放される必要があるという見方なのです」

「『全て』は解放されているのですか。『全て』は唯一なのですか。『全て』は無限であり得ますか。解放される〈『全て』とそれ以外〉、といった思考でそれに接触することは可能ですか」

 

「輪廻思想の公準

 (1) あらゆることは起こる(=世界は自明である)
 (2) あらゆる言語表現は信念(1)の率直な表明のバリエーションにほかならない
の2つ。」
「人がその生を投企・揚棄する前提として、『自己ではなく世界の側が自明であるという認識』が要請される。
自己の生は自明ではないので、死への接触の仕方を媒介して、善きものを選ぶことができる。
その一方で、人生が一度という輪廻思想の極を実質的に緩和しないことには、人生に純粋な苦痛以外もはや見出せなくなり、緩和を意識的に行うことを強制される人が、ときとして大量に現れる」